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引越しの動機 〜 日本と外国の違い〜《後編》

前回の続きです。

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http://www.designknead.com/entry/2017/08/26/230000

 

外国とのアンケートの比較

部屋選びに対する夢や憧れが少ない。それは外国と比較した場合の話であって、きっと日本国内のアンケートだけを見ていればそのような感覚にはならないでしょう。このレポートのように外国と比較することは、自分の国を知ること。当たり前過ぎていたことに疑問を持つきっかけになります。

「ここでいい」か「ここがいい」か

賃貸に対して日本人が「希望を持てない」ということは「期待していない」ということ。賃貸に期待できないから戸建てが欲しいと思う気持ちもわかります。他の選択肢としては、「もっといい賃貸はないだろうか」と必死になって探し、いいなと思う部屋はやっぱり予算オーバー。結局はそれなりの身の丈に合った家賃と広さの部屋に決める。空き家は多いから選択肢はあるはず。なのにどこも似たり寄ったりで決め手が無い。家賃と広さと立地でバランスが取れたところに落とし所を探す。そんなケースが少なく無いのです。

いろんな比較をした結果「ここでいい」と決めるか、それとも直感的に「ここがいい」と思える部屋に出会えるか。一文字の違いが大きな違いです。

日本人が部屋に求めるもの

この結果から見る日本人の部屋に対する価値観というのは、様々な要因が複合的に絡んでおります。部屋に求めるものの違いは、生活に対する意識の違いです。ワークライフバランスという言葉がここ数年言われるようになった背景には、長時間労働ブラック企業の問題があります。その場合は当然仕事に偏重しているわけですから、生活を楽しむ余裕がない。家に帰っても寝るだけ。寝るだけの部屋にそこまでお金をかけたくない。若しくは固定費にあたる家賃を抑えるために、住むところは諦めているという場合もあるでしょう。いい部屋を供給できたからといって、部屋に対する満足度が上がるかというと、そう単純でもないのです。

住環境の満足度を上げる

しかしながら、多忙な中だからこそ、住むところにはこだわりたいというニーズもあると思います。住環境を良くすることと、住環境の満足度を上げることは似ているようで違っていて、前者は建物(ハード)の性能を上げたり設備を充実させたりすることにあたりますが、後者はそれらも含めつつも、地域コミュニティ(ソフト)の豊かさや、自分が住むその地域に対する思いも含めての満足度にあたります。後者のように、住環境の満足度を向上させるような賃貸住宅のあり方ってなんだろう。どうしても、ハードの面に目が行きがちですが、ヒントは後者のソフト面にあるのではないか。このレポートを読みながら、最近はそんなことを考えております。