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引越しの動機 〜 日本と外国の違い〜《前編》

引越しの動機について、日本と外国の違いについての考察です。ちょっと長くなってしまったので前編と後編に分けております。

 

引っ越すとき

進学したとき。就職したとき。転職したとき。結婚したとき。子供ができたときなど。日本においては、生活環境の変わり目に引越しをするというのが一般的でしょう。 

ポートランダーの部屋選び

他の国の人たちはどのような動機で引越しをしているのか。ここ最近話題に上ることが多いポートランドを例に挙げてみたいと思います。「ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる(著/山崎満広)」によると、

ポートランド都市圏には現在、毎週約300〜400人が移住してくる。(中略)彼らの多くは西海岸の自由な風土、海と山に囲まれた大自然、そして西海岸の他の都市に比べて割安でサスティナブルなライフスタイルにひかれて移り住んでくる。

引越しの理由は「ライフスタイル」です。そして引っ越す人の多くは25〜35歳の若年層で、仕事が決まらないままにまずは引っ越しをする。ということは、第三の場所(サードプレイス)を求めて第一の場所(自宅)を決め、それから第二の場所(職場)を探す。ライフスタイル最優先ということですね。

 

 

 さらにもう一つ。「なんの変哲もない取り立てて魅力もない地方都市 それがポートランドだった」(著/ビイ・タオタオ)より、引越しの理由について引用させていただきます。

ポートランド都市圏に転入するYCE(young college-educated:大卒以上の学歴を持つ人)達は、手に届く価格の住宅や、便利な公共交通、整備された自転車道、活気あふれる商店街、守られている自然環境といった同都市圏の高いクオリティ・オブ・ライフを享受するためなら、他の都市圏で得られたはずのより良いキャリア機会を放棄しても構わないと考える人々であるというのである。

 仕事を中心に住む場所を選ぶのではなく、「この街に住みたい!」というところからの引越し。移住を促進するために働きかけるのではなく、人々が住みたいと思う街を作ることに力を入れてきたポートランドという都市。その結果、毎週300〜400人もの人たちが移住するような魅力溢れる都市になったというわけですね。

東京、ニューヨーク、パリ、ロンドンの比較

次に、最近の私の愛読書である「賃貸住宅生活実態調査」(リクルート住まい研究所)による調査結果からみてみましょう。「2-1 住み替えの行動ー受動的なきっかけー」の中で、現在の住宅を探したきっかけについてのアンケート調査が載っています。パーセンテージが高い上位3つを記載しております。

東京

進学、就職、転職、職探しのため(20.4%)

結婚、同棲(19.7%)

よりよい住宅に住むため(15.4%)

 先述したとおりの内容ですね。まぁ、これだけ見ると特に違和感はないと思います。そして他の国はどのような結果かみてみましょう。

ニューヨーク

よりよい住宅に住むため(23.5%)

通勤や通学に便利な地域に暮らすため(19.9%)

よりよい地域に暮らすため(生活利便性や周辺環境の改善)(17.6%)

 

ロンドン

よりよい住宅に住むため(25.9%)

通勤や通学に便利な地域に暮らすため(17.6%)

進学、就職、転職、職探しのため(15.9%)

 

パリ

よりよい住宅に住むため(24.2%)

結婚、同棲(17.0%)

出産や子供の成長(15.8%)

 どこの国でも1位は「よりよい住宅に住むため」となっております。そして全体的に数値が高い。文化や住居に求めるものが日本と違うから、と言ってしまえばそれまでなのですが、サブタイトルからもわかるように日本における引越しの動機は「受動的なきっかけ」であるということが言えます。

 部屋選びで重視するポイント

次に、部屋選びにおいて重視するポイントについて、同レポートを引用しながら考察していきたいと思います。複数回答可として4つの都市のアンケート結果が示されております。まずはレポート内のコメントをピックアップしたものをご覧いただくと、どれだけ東京(日本)と他の国において、部屋に求めるものが違うかがわかります。

  • 全般的に回答スコアが低い
  • 消費者に特に強い希望やこだわりがない
  • 住まい選びの積極性、能動性が低い
  • 東京では、転居にあたって「こんな地域でこんな部屋に暮らしたい」という"夢や憧れ"が少ない
  • 求めるのはコストと通勤・通学の利便性ばかり
  • 回答傾向を表すグラフの山谷は、ニューヨーク、ロンドン、パリが互いに似ていて、東京だけが独自の傾向を示す

このレポートは東京のアンケートを元に作成されていますが、これが日本人の価値観と言い替えても差し支えはないでしょう。最後のコメントにあるように、「独自の傾向」を示すとともに、全体的にスコアが低い結果となっております。まさに「夢や憧れのない住まい選び」ということが浮き彫りとなりました。

 

 

後半へ続く・・・