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札幌の姉妹都市「ポートランド」

 以前、ポートランドと札幌市のことについて記事を書きました。

ポートランドがまちづくりの手法として、用途を適度に複合させる「ミクストユース」という手法を使ったことについて触れました。

ポートランドの都市計画「ミクストユース」 - Design Knead

そして「ミクストユース」を札幌市でも特に人気がある円山エリアと重ね合わせ、円山エリアがなぜ人気があるのかということについて考察してみました。

札幌の街と「ミクストユース」 - Design Knead 

 

札幌の姉妹都市ポートランド

ポートランドと札幌市は1959年11月に姉妹都市として提携しております。実に58年も前から!前回の記事で書きましたが、その頃のポートランドはまだ都市計画に対して市民の論争が起きる前。ポートランドはまさに「なんの変哲もない取り立てて魅力もない地方都市」(前回参考文献のタイトルを引用)でしたが、開拓者によって拓かれた街であることや、ほぼ同緯度で気候が似ていることなどの理由で姉妹都市として提携することになりました。

姉妹都市としての活動

これだけ「人気の都市」として話題に持ち上がっているポートランド姉妹都市として長い付き合いの札幌市が都市計画について積極的に視察や研修をしているのかと思いきや実はそうでもないようで、「札幌・ポートランド 姉妹都市55年の歩み」によると、文化や経済、芸術などの国際交流が主な活動のようです。平成28年9月に札幌市の秋元市長がポートランドを視察しておりますが、帰国報告の中でポートランドのまちづくり、ミクストユースのことに触れる程度に留まっております。

札幌市の都市計画ビジョン

都市づくりの理念は「持続可能なコンパクトシティへの再構築」です。人口減少、超高齢社会、子育て、交通、エネルギー問題などなど、様々な課題が複雑に絡み合っておりますが、ここでは「都市計画」(まちづくり)という部分についてクローズアップしていきます。

地下鉄沿線のミクストユース

札幌市の都市計画マスタープランを見ていくと、所々にポートランドの都市計画と重なる部分があります。ポートランドの「ミクストユース」にあたる言葉が「複合型高度利用市街地」です。地下鉄沿線などのエリアを中心とし、生活利便機能の集積や、集合住宅に対する環境整備に加え、路面電車電停周辺の魅力的な景観づくりなどについて目標が掲げられております。

住宅地や郊外におけるミクストユース

用途純化の副作用が問題として出てきます。すでに地方都市で起きているのが買物難民の問題です。そもそも郊外住宅地というのは車社会であることが前提の都市計画なので、高齢化が進み車が使えなくなってしまった人たちにとって生活に支障をきたす問題となっております。

用途地域の変更

用途地域の全市みなおしについて」(札幌市都市計画HP)によると、その土地に定められている用途地域を下記のテーマを元に見直しを実施しました。

歩いて暮らせるまち

郊外住宅地の主要な道路などの沿道において、第一種住居地域・第二種低層住居専用地域の指定区域を拡充しました。

床面積10,000平方メートルを超える大規模集客施設の立地を制限する特別用途地区を定めました。

 

まず一つ目は用途地域の変更。これは郊外住宅地において、食品や日用品などの小売店舗を建てられるように、少し制限の緩い用途地域へと変更しますよ、というもの。あくまでも「建てれますよ」という状況ができただけ。そこに店舗を出すかどうかは別の話になってきますので、それ以降は行政と民間との連携が必要です。

もう一つの大規模集客施設に対する制限。「大規模」というからには郊外型の施設となり、それはつまり車で行くことが前提となります。車に依存しなくても生活ができるコンパクトシティを目指しておりますので、それに対して制限することで、身近にある(歩いて行けるところの)スーパーマーケットの消費を促すことにもつながります。

自分が住んでいる街に対する意識

自分が住んでいる街の都市計画について意識することってほとんどないのが現状だと思います。ましてや「どうやったらもっと住みやすい街になるか」なんて考えたことがある人自体かなり少数派でしょう。自分自身こうしてポートランドに興味を持つまでは札幌市の都市計画なんて気にかけることはありませんでした。

ポートランドで1960年代にジェイン・ジェイコブズさんが巻き起こした市民運動などを振り返ると、一般市民が持つ街に対する問題意識が大きな鍵となっております。都市が変わるには行政が動くだけではだめで、市民だけでも難しい。行政、市民に加え、事業者、公共機関がそれぞれの利害を分けて話し合うことが大切。といってもポートランドのようにその仕組みを作り、継続的に運営していくことは容易ではありません。

日本における市民参加型のまちづくり

その中でも日本においては「市民参加型のまちづくり」というのはとてもハードルが高いことだと感じます。まちづくりの市民団体のバランス構成をみると、どうしても年配の方たちが多く、これからの社会を支える若い人たちの参加が少ないように見受けられます。ブラック企業や過労死などの問題。極限までの生産性や効率化を目指し仕事が人生の中心になってしまっている価値観が未だに残っており、そこに意識を向けれるほど、普段の生活に(心と時間の)余裕がないことに起因するのではないかと思います。「自分が暮らす街をより良くするにはどうしたらいいか」ということに多くの人の意識が向くには時間がかかりそうです。

自分自身はまだまだ興味を持ち始めたばかり。ポートランドに対する興味関心を起点にしながら、自分が住む街に対して何ができるだろうかと自問自答していければと思います。

 

 

 

 

 参考文献

「札幌・ポートランド 姉妹都市提携55年の歩み」札幌市総務局国際部交流課

 「ポートランドー世界で一番住みたい街をつくる」山崎満広