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札幌の街と「ミクストユース」

前回の記事では、ポートランドがどのようにして魅力的な街を作り上げたかについて触れました。

↓前回の記事 

ポートランドの都市計画「ミクストユース」 

ミクストユース

 

 人が住む地域と工業地域を分けたりして、用途を混在させないようにすることを「用途純化といい、今まではそれが一般的な考え方でした。その一方で「ミスクストユース」という考え方は、複数の用途を適度に混在させる都市計画の手法のことです。50年以上も前に書かれた「アメリカ大都市の死と生」(著/ジェイン・ジェイコブズ)に書かれている「ミクストユース」という考え方が今になって見直されています。

その地区や、その内部のできるだけ多くの部分が、二つ以上の主要機能を満たさなくてはなりません。できれば三つ以上が望ましいのです。こうした機能は、別々の時間帯に外に出る人々や、ちがう理由でその場所にいて、しかも多くの施設を一緒に使う人々が確実に存在するよう保証してくれるものでなくてはなりません。

「アメリカ大都市の死と生」著/ジェイン・ジェイコブズ より引用 

都市の街路や地区に多様性を生み出すための4つの条件のうち1つ目に上げているのがこちらになります。この後に「この4つの条件の必要性は、本書が主張する最も重要な論点です」とも言っております。

ミクストユースのエリア=魅力的なエリア

ミクストユース化されているエリアが賑わいがあり魅力的なエリアだとすれば、魅力的な地域や人気がある地域というのは、既にミクストユース化されている地域なのではないか。そんな仮説(逆説?)を立てて検証してみました。

用途地域

その土地に建てることができる建物用途を制限するために、都市計画法上で「用途地域」というものが設定されています。全部で12種類ありますが、大きく分けると住居地域、商業地域、工業地域など。これは「用途純化を前提としたもので、用途の混在を防ぐことが目的となっております。

とはいうものの、住居地域でしか住宅が建てられないというわけではなく、ほとんどの場所で住宅の建築は可能。建てられないのは工業専用地域だけです。一方で、住居系の地域で店舗や事務所などを建てようとすると、規模や細かい用途に対する制限がかかってきます。

札幌の用途地域 

人気のあるエリアというのは、商業施設と住居地域がほどよく混在しているエリア。ポイントとなるのは、商業地域と住居系地域の間に位置する「近隣商業地域」となります。

近隣商業地域

主に近隣住民の日用品販売店舗などの業務の利便増進を図る地域で、風俗施設、一定規模以上の工場等は建てられません。(札幌市都市計画課のHPより)

 

札幌駅や大通り、すすきののあたりまでは商業地域で、そこから伸びる主要な道路を軸として商業地域が枝分かれし、近隣商業地域、住居系地域へと広がっています。そこで円山エリアの用途地域を見てみましょう。

 

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 濃いピンクが商業地域、薄いピンクが近隣商業地域です。黄色が第一種住居地域となっており、このあたりは商業地域から住居系の地域へとグラデーションを成していることから、まさにミクストユース化されていることがわかります。街を歩いていても、1階が店舗、2階より上がマンションになっている建物がたくさんありますね。

円山以外で、商業地域、近隣商業地域、住居系地域が混在するエリアとしては、札幌駅から桑園駅にかけてのエリア、琴似のJR駅と地下鉄駅周辺のエリアなどがあります。

ちなみに、札幌の用途地域はweb上で確認することができますので、自分が住んでいるところがどんな用途地域なのか調べてみるのも面白いですね。

都市計画情報提供サービス/札幌市 

どの地域に住みたいか?

以前、札幌市内でどのエリアに住みたいかということについて書きました。

どのエリアに住みたいか?

 そのときの魅力的なエリアの条件として「商業施設が充実していて、都心からほど近く、なおかつ公園など緑豊かな環境が近くにあればなお良し。」ということでまとめてみました。

"商業施設が充実していて"という部分に関しては、先述のミクストユースというキーワードから人気の謎を紐解いてみました。そして円山公園北海道神宮など、歩いて行ける範囲に"緑豊かな環境"があり、"都心(大通りや札幌駅側)からもほど近く"、円山エリアというのはまさに札幌における居住のゴールデンエリアとも言い換えることができるのではないでしょうか。

札幌市とポートランド

こうして都市と都市を重ね合わせると、いろんなことが見えてきます。なんとなく「住んでみたいな〜」とか「魅力的だな〜」と思っていた、そのなんとなくの魅力というのが浮き彫りになってきます。いろいろ調べていると他にも面白い発見がありましたので、引き続きポートランド、そして我らが住む札幌の街の魅力について分析していきたいと思います。